―経営者は語る―

「震災から得たもの」

共英油化株式会社 代表取締役社長 五十君 弘

 

 早いもので阪神淡路大震災から13年目を迎えようとしています。

鳴尾浜海岸近くの我社も被災しましたが、全社員とその家族には、家屋の倒壊はありましたが人的被害が無かったのは奇跡的でした。

 当日私は東京より西宮に帰るために6時発の新幹線に乗っていましたが、時刻が過ぎても発車せずテロップで関西方面の地震発生で電車は動かないとの案内があり、急いで埼玉の出張所に帰りテレビを見て仰天しました。

 映し出される神戸、芦屋、西宮の街のビルや家屋の倒壊、車を巻き込んだ高速道路、電車や駅の惨状、それにも増してあちらこちらで発生した火事がだんだん大きくなってゆく様は恐怖そのものでした。9/11のテロの様子とダブって思い出されます。。

 我社は? まだ携帯電話のない時で電話が通じません。テレビはヘリからの映像で西から東へ順番に神戸港からポートアイランド、六甲アイランド、西宮浜と全ての埋立団地のひどい崩壊を映しだし、いよいよ次は我々の所だと思った時は、本当に観念しました。ああこれで駄目だ、終わりだと思い再建とか建直しなどは頭に浮かびませんでした。

映像からは被害の状況がはっきり判らず、いじいじしましたが、被害は少ないとの公衆電話からの連絡があり、ほっとしてやっと今後の事を考える余裕が出来ました。

 会社では、ガス、水道は止まったものの電気は通じていましたのでこれらの復旧迄の2週間あまり燃料や水の確保に人海戦術で対処して行くことになります。

 私は仕事に於いて重大な決断をする立場ですが、この阪神淡路大震災の経験がその後の心の持ち方に非常に大きく影響し、難題に立ち向かう気力を与えてくれたと思っています。