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  【第11回】 水溶性切削油剤の劣化のメカニズム

はじめに
 不水溶性切削油剤は,希釈しないでそのまま使用されるが,水溶性切削油剤は,通常水で2〜10%程度の濃度に希釈して使用される。このため,水溶性切削油剤は,図1に挙げたような様々な要因により使用経時において劣化していく。ここでは,水溶性切削油剤の主な劣化要因について説明する。
 


 

劣化の要員

1.微生物の影響

 水溶性切削油剤は,循環使用され絶えず外気と接することから,微生物(バクテリア,酵母,黴)の混入が起こりやすい。混入経路としては,希釈水に棲息するものや空中浮遊菌の落下,塵埃や土壌および加工物からの持ち込み,あるいは残留クーラントや前工程の加工油からの持ち込みなどが挙げられる。さらに使用中のクーラント温度は,30℃〜35℃程度であることから,微生物が繁殖しやすい温度であるといえる。  これら微生物は,クーラント中の有機成分を資化して繁殖する。このためクーラントの濃度が低下するため,さび止め性の低下や切削性の低下がおこる。微生物の繁殖はこういったクーラントの性能低下にとどまらず,腐敗臭の発生による作業環境の悪化を招く場合もある。


2.切屑の影響

 切削加工を行うことにより,切屑がクーラント中に混入する。この切屑に油剤成分の一部が吸着されて濃度低下の原因となる。一方,クーラント中に切屑が長期間滞留すると,切屑からマグネシウム,亜鉛,銅,コバルトなどの金属元素がクーラント中に溶出する。溶出した金属元素は油剤成分である脂肪酸と反応して水に不溶な金属セッケン,いわゆるスカムを作り,クーラントの分離や不安定化を引き起こす。  クーラントに対する切屑の種類や形状などの影響度合いを表1に示す。




3.他油の混入

 ここで説明する他油とは,加工機の作動油あるいは潤滑油,加工物に付着しているさび止め油,熱処理油,洗浄油や不水溶性金属加工油(切削油を含む)などの,水溶性切削油剤以外の油のことを指す。このような他油がクーラントに混入すると,クーラント上に浮上するが,この浮上した他油に水溶性切削の成分が移行して濃度低下の原因となる。
 また,他油の成分がクーラントに溶出すると様々な劣化要因となる。塩素系添加剤を含有する金属加工油から,塩素分が溶出するとさび止め性低下の要因になる。また,カルシウムやバリウムなどの金属元素が溶出するとクーラントの安定性の低下を引き起こす。また,リン分が溶出すると腐敗しやすくなる。


4.希釈水の影響

 クーラントの大部分は水であるため,希釈水の性状もクーラントの劣化に大きく関わってくる。希釈水の全硬度が低いと泡が立ちやすくなり,高いとスカムによる機械汚れが発生しやすくなったり,クーラントの安定性が低下したりする要因となる。塩素イオンや硫酸イオンの含有量が高いとさびが発生しやすくなる。また,前にも述べたようにリン分を含む水や,微生物を含むような水(井戸水など)を使用する場合は,腐敗が起こりやすくなる。
 このような希釈水中の成分は,クーラントの補給を繰り返すことにより,次第に蓄積されるため,更液当初は問題にならなくても使用経時で油剤の劣化要因となることがある。


水溶性切削油剤の劣化を抑えるために
 水溶性切削油剤は,様々な要因により劣化していく。クーラントの劣化を抑えて寿命を延ばすには適正な油剤の選択と管理が重要である。  まず,加工方法や希釈水の性状に適した水溶性切削油剤を選び,適正な濃度で管理する必要がある。また,切屑や他油などは定期的または常時除去することや,腐敗や泡立ちなどの傾向がある場合は,早期にクーラントの濃度の調整や添加剤の投入などにより,対策を行うことが望ましい。

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